ハウスみかんはなぜ甘い?根っこの話。(前編)
こんにちは、海と山に囲まれた、佐賀県唐津市浜玉町でハウスみかんを栽培する大場農園です。この記事では、3代目・就農22年の夫HIROが書くマニアックな栽培記事(大場農園note)を、私CHISAが農家歴の浅い自分がわかる言葉でリライトして、読者のみなさまにわかりやすくお伝えしていきます。
特に今回の元記事は難読でした…難しくてもどんとこい!という方は大場農園noteも覗いてみてくださいね。コメントやご質問もnoteにどうぞ。( 大場農園「糖度13度の壁を越える】ハウスミカンの極上な甘さを生み出す「根作り」の秘密」)
- ●ハウスみかんの甘さの理由
- ●甘みのもとがつくられ、果実にとどく仕組み
- ●水を切るは半分正解、半分不正解
- ●大事なのは根を育てること、中でも・・・
夏にみかんを食べたことはありますか?
ハウスみかんは5月から8月にかけて出荷される、夏のみかんです。冬のみかんとは品種は同じ温州みかん。
でも、育ち方がまるで違う。ビニールハウスの中で、温度・光・水・土のすべてを人の手でコントロールして育てられます。
そして「なぜそんなに甘いのか」というほど、甘い。
今回は、ハウスみかんの甘さが生まれるメカニズムを、前編・後編に分けてお話ししたいと思います。
みかんの糖度13度は、とても甘い!
果物の甘さを示す「糖度」は、果汁に含まれる糖分の濃度を数値で表したものです。果物によって平均値やブランド基準が異なります。
| 品目 | 糖度中央値(目安) | ハイブランド基準 | 主なベンチマーク・ブランド |
|---|---|---|---|
| 露地みかん(温州) | 約10.0〜11.0度 | 12.0度〜14.0度以上 | 長崎せいひ 味ロマン(12.0度以上) 長崎 出島の華(14.0度以上) |
| ハウスみかん(温州) | 約11.0〜12.0度 | 13.0度以上 | JAからつ ハウスみかん特秀・贈答用(13.0度以上) |
| マンゴー | 約12.0〜14.0度 | 15.0度以上 | 太陽のタマゴ(15.0度以上) 美らマンゴー(15.0度以上) |
| トマト | 約4.0〜6.0度 | 8.0度以上 | 一般的なフルーツトマトの呼称基準 |
| りんご(ふじ等) | 約13.0〜14.0度 | 14.0度〜15.0度以上 | JA相馬村 きわみちゃん(14.0度以上) JAグリーン長野 赤秀プレミアム(15.0度以上) |
| ぶどう(大粒系) | 約16.0〜18.0度 | 18.0度以上 | JA各産地 シャインマスカット(18.0度以上) JA全農長野 巨峰(18.0度以上) |
みかんは、糖度13度を超えると、ひと口で「甘い」と声が出るレベルです。果汁がじゅわっと口の中に広がったとき、後味にじんわりとした甘みが残る。
露地みかんに比べると、糖度を上げるためのさまざまな打ち手が打ちやすいハウスみかん。大場農園ではその年の気候や畑にもよりますが、果実の平均が13度〜13.5度くらいです。
露地みかんとハウスみかんの糖度はなぜ違うのか?
露地みかんとハウスみかんの差は、「人の手でコントロールできる範囲」の違いから生まれます。
露地みかん(屋外で育てるふつうのみかん)は、秋〜冬の寒さと乾燥の中でゆっくりと糖分を蓄えていきます。自然の季節変化が甘みをつくる。
ハウスみかんは、ハウスの内部温度・湿度・日射量・灌水量をコントロールしながら、みかんの木が「甘みを蓄えやすい状態」になるよう人の手で誘導します。ビニールハウスで自然の恵みを「みかんにとって一番良い形」に増幅してみかんの木に届けるような感じです。
「水を切れば甘くなる」は本当か?農家が明かす誤解
よく言われるこのセリフ。半分正解・半分誤解。ここからは甘くなる原理を丁寧に紐解いていきます。
みかんが甘くなる基本の原理
光合成で作られた養分が、茎を通って果実に運ばれ、果肉に蓄積されて、甘いみかんになるというのが原理原則です。
まずは中学校の理科で習った基礎知識からクイズです
ABCの()に入る言葉を答えてください。
「植物は(A)をします。光合成は、葉が太陽の光を受け、空気中の(B)と根が吸い上げた(C)を材料に、養分を作ります。」
A 光合成 B 二酸化炭素(CO2) C 水
いくつ正解できましたか?図解するとこのような感じ。

そして養分には様々な成分が含まれます。
みかんの甘さで重要な「ショ糖」が光合成で作られていることがわかります。
| 光合成でつくられる主な養分 | 一言で言うと | みかんの甘さとの関係 |
|---|---|---|
| ショ糖(スクロース) | 運ばれる糖 | 葉から茎を通って果実へ輸送される。果肉に蓄積されると甘みの主役になる |
| グルコース(ブドウ糖) | エネルギー源の糖 | 木が動くためのエネルギー。果実でも甘みに貢献する |
| フルクトース(果糖) | 甘みが強い糖 | ショ糖が果実内で分解されてできる。砂糖より甘みが強く、みかんの甘さを後押しする |
| デンプン | 貯蔵用の養分 | 葉に一時的に蓄えられる。必要なときに糖に変換されて使われる |
「水を切ると甘くなる」のはなぜ?
先ほど「水を切ると甘く」は半分正解といいました。これは水が減ることで、果実に蓄積された糖が相対的に濃くなるからです。
水を切ると木全体の水分量が減る。すると、みかんの果実の水分が、木の部分で不足した水を満たすために移動する。
水分だけが減った果実の細胞の中では、水分と糖度のバランスが変化して、糖度の割合が多くなる。だからみかんがより甘くなる。

水を切ると甘くなる。というのは、そういう仕組みで動いています。
水を全くあげずに断水すれば、超甘くなる?
残念ですが、水を全くあげないと甘くなりません。
みかんの木は水分が極端に不足すると、光合成を止めてしまいます。
再び理科の問題です。
ABCの()に入る言葉を答えてください。
「植物の体内の水が、水蒸気となって空気中に出ていく現象を( A )といいます。主におもに( B )で行われ、その中でも葉の裏側にある( C )というすきまから多く行われます。
A 蒸散 B 葉 C 気孔
みかんの木に水分が入ってこない状況で蒸散を行うと、木の水分がますます足りなくなってしまう。だからみかんの木は自己防衛のために気孔を閉じます。気孔が閉じると、CO2が葉に取り込めなくなる。CO2が入らなければ光合成が止まる。光合成が止まれば、ショ糖が作られない。

甘くしようとして水を絞ったのに、甘みをつくる力そのものが止まってしまう。皮肉な話ですが、これが「断水しすぎ」が招く現実です。
だから大事なのは「ちょうどよい加減」。光合成を止めないまま、じんわりと糖分を凝縮させていける、絶妙な水分量を探すことなのです。
甘さを作る本当の主役は「根っこ」だった
では、「ちょうどよい水分ストレス」をうまく与えるために、何が必要か。
それは「根っこ」特に「深い根っこ」が必要とされます。
根が深いと何が変わる?
根が深いと、木が吸い上げる水分量が安定します。

みかんの根には、地表のすぐ近くに広がる細い根と、もっと深いところまで伸びる太い根があります。
浅いところの根は水を吸う力が強い反面、土の表面に近いぶん乾燥や温度変化の影響をもろに受けます。ちょっと水を絞っただけで木がびくびくしてしまう。ちょうどよく水を絞りたくても、その幅がとても狭い。
深さ20〜40cmくらいまで根が届いていると、話が変わります。その深さになると土の温度が安定してきて、水分も表面ほど急激には変動しない。少し水を絞っても、根が深い層からゆっくり水を引き上げながら光合成を続けられる。
甘みをつくりながら、同時に糖分を凝縮させていく。その両立は、深い根があってはじめて成り立ちます。
深さ20〜40cmに根を育てる、2〜3年の土づくり
じゃあ、その「深い根」はどうやって育てるのか。
根が深い層に伸びていくためには、まず土が柔らかくなければなりません。固い土は根にとっての「壁」です。どれだけ根が伸びようとしても、先に進めない。また、深いところに養分がなければ根が「行く理由がない」。根は基本的に、楽な方向・得な方向に伸びていきます。
だから畑では、土から整えていく。有機質肥料(植物由来・魚由来)を使いながら微生物を活かして、少しずつ土をほぐしていく。この作業、結果が見えるまでに2〜3年かかります。今年やって来年すぐ根が伸びる、という話ではない。
みかんの木は待ってくれる。でも農家の方が、もっと長く待つ仕事をしています。
前編のまとめ
「なぜ甘いのか」をたどっていくと、土の中の根っこにたどり着きました。
では、根っこを育てるために畑でやっていること。土をどう整えるか、何を使うか、水をどう扱うか…その具体的な中身は、後編でお伝えします。
ハウスみかんと露地みかんは何が違うの?
一番の違いは「育つ環境」です。露地みかんは屋外で自然の季節変化にさらされながら育ちます。ハウスみかんはビニールハウスの中で温度・湿度・水・光を人の手でコントロールして育てます。そのぶん農家の技術と判断が味に直結するため、管理の丁寧さがそのまま甘さに出やすいのが特徴です。
「断水すれば甘くなる」というのは本当?
完全に間違いではありませんが、それだけでは甘くなりません。みかんの甘みのもとは葉の光合成でつくられます。水を切りすぎると木が自己防衛のために光合成を止めてしまい、甘みをつくる力そのものがなくなります。「水を絞りながら光合成を続ける」という両立が必要で、そのために深い根っこが重要になります。
ハウスみかんの旬はいつですか?
5月から8月が出荷時期です。品種によって収穫時期が異なり、大場農園では上野早生(5〜6月)と宮川早生(6〜8月)を順番に出荷することで、シーズンを通じてお届けできるようにしています。夏のギフトや自分へのご褒美に選んでいただく方も多いです。
大場農園のハウスみかん、いよいよ6月から出荷開始です。こちらからご覧ください♪
後編が書き上がりましたら、リンクを貼ります。お楽しみに。
このブログの元記事(農家3代目・就農22年の夫HIROが書くちょっとマニアックな栽培記事)はこちらから。
「ハウスみかん」はみかん全体のたった2.5%の、流通量の少ない、希少な柑橘です。
みかんの旬の情報をチェックいただくと、いちばん美味しい瞬間を逃さずにお求めいただけます。

