ハウスみかんはなぜ甘い?根っこで操る水の話。(後編)
こんにちは、海と山に囲まれた、佐賀県唐津市浜玉町でハウスみかんを栽培する大場農園です。このブログでは、夫HIROが書くちょっとマニアックな栽培記事(大場農園note)をもとに、妻の私CHISAがリライトしてお伝えしています。
元の記事はこちら → HIROのnote「ハウスみかんの甘さの秘密」
前編では、ハウスみかんの甘さの仕組みをお伝えしました。
- ・甘みの元は光合成でつくられるショ糖。
- ・水を切って果実の中に凝縮させるとさらに甘くなる。
- ・だけど、水を切りすぎてはダメ。
- ・ちょうどよい水分ストレスが大切で、そのためには深い層にしっかり根が張っていることが重要。
後編は、日本のハウスみかんの1%を生産する大場農園が実践している、根っこ育てる土づくりと水の使い方をお話ししていきます。
- ●深い根をつくるために行っている土の改善
- ●「根を元気にするサプリ」の働き
- ●「ちょうどよい水分ストレス」のためには観察
ハウスみかんを甘くするために実践する3つステップ
STEP1 微生物を味方にして、土づくり
まずは、土づくりの話から始めます。みかんの木にとって、土は「立ち上がる床」であり「ごはんと水が出てくるキッチン」みたいな場所です。その土の性質、とくに固さやスキマの多さといった「物理性」を整えることが重要。
そのために重要なのが「微生物」。微生物が元気に動ける環境を用意することが、じつは根にとっても大事な準備になります。
微生物は、土の中で有機物を分解しながら、植物が吸いやすい形の養分をつくってくれます。それと同時に、微生物の働きによって、土の粒が小さな団子状にまとまった「団粒構造」という状態になっていきます。この団粒と団粒のあいだに、ほどよいスキマができることで、空気や水が通りやすくなり、根もスルスルと入りやすいフカフカの土になります。
反対に、固い土は、根にとってほとんど「コンクリートの壁」のようなものです。スキマが少ないと、根は物理的に進めないうえに、酸素も足りなくなってしまいます。そうすると深い根を伸ばすことはできません。
だからまずは、土を柔らかくして、根の通り道をつくってあげることが、根が深く伸びていくための前提条件になるわけです。
大場農園では、植物由来や魚由来の有機質肥料を中心に使いながら、こうした土づくりを2〜3年かけてじっくり進めています。土は一度手を入れたらすぐ劇的に変わる、というより、「少しずつ育てていくパートナー」に近い存在です。みかんの木と同じように、時間をかけて付き合うことで、ようやく根がのびのびと暮らせる土に育っていきます。
STEP2 サプリで根をもっと元気にする
土の環境が整ったら、次はみかんの根っこ自体を元気にするサポートです。ここで活躍するのが「バイオスティミュラント」という資材。一言でいうと「根っこのためのサプリメント」です。
このサプリメントには、大きく分けて2つの種類と優しい働きがあります。
- 【アミノ酸系】体力を温存し、「本業」に集中させる
- 植物は普段、自分でアミノ酸を作るためにたくさんのエネルギーを使っています。そこへそのまま使える材料を届けることで、アミノ酸を作る手間を省いてあげます。浮いた分のエネルギーを「根を伸ばす」「水を吸う」「養分を運ぶ」といった本来の仕事にたっぷりと回せるようになります。
- 【核酸系】成長のスイッチをそっと押す
- 根の先端にある「新しい細胞が生まれる場所」に、「さあ、もう少しがんばろう」と声をかける役割です。細胞分裂のスイッチを少しだけ押してあげることで、根が自然に伸びていくのを後押しします。
私たちが大切にしているのは、「強い成分でムリヤリ根を引っ張る」のではなく、「根っこ自身が動きやすくなるように足場やエネルギー条件を整える」という考え方です。この方が木への負担も少なく、長く安定した効果につながります。
みかんの木は、私たちにとって「一緒に仕事をする仲間」です。命令や力ずくではなく、対話しながら本来の力を引き出していくのが大場農園のスタイルです。
そして、もう一つ大事なのが「いつ使うか」というタイミング。
サプリメントは、木がちょうど根を伸ばそうとしている「発根期」に合わせて使うことで一番力を発揮します。人間が運動や勉強の前にエネルギーチャージをするのと同じですね。
なんとなく常に入れておくのではなく、「今、この木は動きたがっているか?」をしっかり観察し、一番良いタイミングでそっと背中を押してあげる。ここでは私たちの「木と対話する力」が問われます。
イメージとしては、「強い作用でムリヤリ根を引っぱる」のではなく、「根が自分の力で動きやすくなるように、足場やエネルギー条件を整えてあげる」感じです。そのほうが木への負担も少なく、長く安定した効果につながりやすい。
畑全体の考え方としても同じで、みかんの木を「一緒に仕事をする仲間」のように見て、命令や力ずくではなく、対話しながら本来の力を引き出していく。大場農園では、そんなイメージで木とつき合います。
もう一つ大事なのが「いつ使うか」というタイミングです。バイオスティミュラントは、木がちょうど根を伸ばそうとしている「発根期」に合わせて使うことで、いちばん力を発揮します。人間でも、運動前や勉強前にエネルギーをとると効果的なのと似ています。なんとなく常に入れておけばいい、というものではなく、「今、この木は動きたがっているか?」を観察して、そのタイミングでそっと背中を押してあげるイメージです。ここでは「木と対話する力」が問われます。
「バイオスティミュラント」
聞き慣れないものなので、「体に悪くないのかな…?」と少し不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
バイオスティミュラントは農薬や肥料ではなく、海藻やアミノ酸、フミン酸、微生物由来の成分など、もともと自然界にあるものを原料にした製品がほとんど。安全性も、国の決めたルールに沿ってしっかりと確認されています。
私たちが作ったみかんを一番たくさん口にするのは、たぶん我が家の子供たち。特に末っ子の3歳は、世の中のすべてのみかんを「りっちゃんのみかん!」と呼ぶほどのみかん大好きっ子です。
「自分の子どもに、心から安心して食べさせられるか」
私たちの基準はとてもシンプルです。当たり前に安心なものを作っています。
STEP3 「ちょうどいいストレス」を与える水の使い方
大場農園では、土づくりと深い根づくりで「下準備」ができたうえで、水分ストレスを細かくコントロールしていきます。開花が終わって実がふくらみ始めてから後期肥大にかけては、「断水」ではなく、「少量をこまめに」の灌水(かんすい:水やりのこと)に切り替えます。いきなりカラカラにはせず、ゆっくり水を絞っていくイメージです。
このとき頼りにするのが、木からのサインです。
葉の張りやしおれ具合、厚みや色、新梢の伸び方や成長点の数などを毎日見ながら、「根が枯れないギリギリ手前」で水分ストレスをかけ続けます。木にとっては少し厳しいけれど、自力で踏ん張れるラインを探る感じです。
土の中では、深く張った根と、微生物やバイオスティミュラントのおかげで、根が動ける土台が整っている。そこに、水を「かけすぎない/止めすぎない」バランスで与えていくことで、光合成で作った糖を無理なく実にため込ませていく。
深い根・よい土・ほどよい水分ストレス。この三つがそろった状態を目指して、大場農園のみかん作りは組み立てられています。
まとめ:みかんの甘さは、目に見えない根っこから生まれる
甘さは葉でつくられ、根っこで守られる。
葉の光合成でつくられたショ糖が果実に蓄積され、水を絞ることで糖分が凝縮される。でもその「水を絞る」ができるのは、深い根っこがあって光合成を止めずにいられるから。その根っこを育てるために、土を整え、サプリで後押しし、精密に水を管理する。
みかん一粒の甘さの奥には、何年もかけて育ててきた、目には見えない根っこの話があります。
2026年のハウスみかんがいよいよスタートします。
大場農園では2026年の収穫を昨日(5月25日)よりスタート。いよいよシーズンが始まります。
日本の1%のハウスみかんを生産する、大場農園から直送のハウスみかん。通販でお取り寄せできます。
私たちが農作業で見る自然のなかのさまざま色と、葉脈や波のエネルギーを表現した模様を重ねたギフト箱をご用意しています。
お中元や夏のギフトにもぜひお使いください♪
有機肥料を使うと味が変わるの?
有機肥料は、土の中の微生物のエサになります。微生物が元気に働くと、土がふかふかの「団粒構造」になって根が伸びやすくなります。深い根が育つことで、甘みを凝縮するための精密な水管理が可能になります。
微生物がみかんの甘さにどう関係するのですか?
微生物は有機物を分解して根が吸いやすい養分を作り、同時に土を団粒構造にしていきます。そのふかふかの土が、根を深く伸ばす「道」になる。深い根があることが、甘さを生む水分管理の土台になっています。
みかんに水をあげすぎるとどうなるの?
果実の細胞に水がたっぷりある状態では、糖分が水で薄まって甘みが出にくくなります。さらに根が酸欠になり、木全体が弱りやすい。甘いみかんを作るには、「多すぎず、少なすぎず」のバランスが大切です。
このブログの元記事(農家3代目・就農22年の夫HIROが書くちょっとマニアックな栽培記録)はこちらから。
「ハウスみかん」はみかん全体のたった2.5%の、流通量の少ない、希少な柑橘です。
みかんの旬の情報をチェックいただくと、いちばん美味しい瞬間を逃さずにお求めいただけます。

