夏に食べられるみかん。ハウスみかんと夏みかんは別物?ハウスみかんの甘さのワケも解説します。

夏が近づくと、果物売り場からみかんの姿が消えていきます。
3月4月頃までは、売り場に溢れていた様々な品種のみかん。気づけばいちごもみかんも棚からなくなって、かわりにスイカやもも、マンゴーが並び始める。「夏は、みかんの季節ではない」と、思っている方も多いのではないでしょうか。
でもあります。夏に食べられるみかんたち。
農家の私がハウスみかんの話をすると、よく「夏みかん」の話にすり替わっていることがあります。気持ちはとてもよくわかります。「夏に食べるみかん」だから「夏みかん」。語感はぴったりです。
夏に食べられるみかん「ハウスみかん」と「夏みかん」実は全くの別物です。
ハウスみかんとは何か

ハウスみかんとは、ビニールハウスの中で育てた温州みかんのことです。
品種は「宮川早生(みやがわわせ)」が中心。秋から冬に旬を迎える、あの馴染み深い温州みかんと同じです。
※産地や出荷時期によって他の品種もあります
ただし不思議なことが起こります。同じ品種でも夏と冬では、味が全う、そして値段も違う。
露地栽培のみかんは、自然の恵みをそのままストレートに受けて育ちます。気候によってとても良い年もあれば、悪い年もある。
それに比べてハウスみかんは、ビニールハウスの中で温度・湿度・水分量を農家が細かく管理しながら育てられます。冬にハウスの内を加温して人工的に春をつくり、夏をつくり、やがて本当の夏が来るころに食べ頃を持ってきます。
季節まで逆転させるハウスみかんの栽培は、みかん農家にとっての最難関。手間とコストがとてもかかります。
ハウスを温めるための燃料費のアップに苦しみ、毎日毎日朝から細やかな管理が欠かせない。それでもハウスみかんを育てるのはみかん本来の旨みを最大限に引き出せるハウス栽培の面白さと、その味に喜んでくれるお客様いるから。
お客様の「おいしいね」の一言が私たちの最大の励みです。
なぜハウスみかんはあれほど甘いのか

ハウスみかんが甘い理由は、「管理された環境でじっくり糖を蓄えられるため」
ビニールハウスについた様々な装置は、自然の良い点を増幅し、台風など厳しい気候のときはみかんの木を守る存在。自然の恵みをより豊かにしてみかんの木に届けます。
さらに生育ステージやみかんの木の状態に合わせてハウスの中の環境を変化させていきます。
これは、単に果実を甘やかすためではありません。適切にストレスをかけ、みかんの生命力を果実に溜め込み旨みに変えていく大切な変化。経験と探究心がものをいう、ハウスみかん農家の腕の見せどころです。
一口食べてみると、冬のみかんとの違いは明白!
薄皮はとろけるように柔らかく、ひと玉口に入れた瞬間、ひんやりと甘い果汁がジュワッと広がる。酸味は穏やかで、後味はスッと爽やか。暑い日にキンキンに冷やして食べると、その甘さがそのまま体に染み込んでいくような、幸福感に包まれる感覚があります。ハウスみかんにしかない、夏だからこそのおいしさです。
夏みかんとは何か

では、「夏みかん」とはどんな果物なのか。
夏みかんの正式名称は「ナツダイダイ」。温州みかんとは全くの別品種で、文旦(ぶんたん)の仲間に分類される大果柑橘です。1個400〜500gほどになる大ぶりなフルーツで、皮もしっかり厚い。
その歴史は、なかなかドラマチックです。
江戸時代に山口県の海岸へ漂着した種子が起源とされています。長州の地で育まれ、やがて全国へと広まっていった、由緒ある柑橘です。
味の特徴は、酸味が強いこと。
秋から冬にかけて木の上で熟成させ、春から初夏になってようやく酸が少し抜けてきます。クエン酸が豊富で酸味が強いため、生食は好みが分かれがち。マーマレードや砂糖煮などの加工用として昔から親しまれてきた柑橘です。
名前に「みかん」とついていますが、温州みかんとは全く別の個性を持つ果物です。酸味の効いた夏みかんのマーマレードは、それはそれでとてもおいしい。ただ、「甘いみかん」を期待して手に取ると、少しびっくりしてしまうかもしれません。
ハウスみかんと夏みかん、違いのまとめ。
| ハウスみかん | 夏みかん | |
|---|---|---|
| 品種 | 宮川早生など(温州みかん) | ナツダイダイ(文旦系) |
| 栽培 | ビニールハウス管理 | 露地栽培 |
| 収穫時期 | 5月〜8月 | 4月下旬〜5月下旬 |
| 味 | 甘くて爽やか・薄皮でとろける | 酸味が強め・皮が厚い |
| 用途 | 生食・贈答用 | 主に加工用 |
見分け方のひとつは、大きさです。
ハウスみかんは手のひらにすっぽり収まるくらいの小ぶりなサイズ。夏みかんはずっしりと重く、ひとまわり以上大きい。売り場のラベルに「ハウスみかん」「夏みかん」と書いてあることも多いので、手に取る前にそっと確認してみてください。
大場農園のハウスみかん「夏織」という名前の由来
大場農園では自社で生産を手がけるハウスみかんに「夏織(なつおり)」と名前をつけました。
私たちが普段目にしている柑橘の名前には、農学上の「品種名」と、一定の品質や基準を満たしたものだけに許された「ブランドネーム(登録商標)」があります。
■品種名とブランドネーム(商標)の具体例
| 品種名 | ブランドネーム(商品名) | 権利者 / 使用条件 | |
|---|---|---|---|
| 愛媛果試第28号 | 紅まどんな | 愛媛果試第28号 → 紅まどんな | JA全農(えひめ) ※指定の選果場・品質基準クリア(愛媛県内でのみ栽培可能) |
| 不知火(しらぬひ) | デコポン | 不知火(しらぬひ) → デコポン | JA熊本果実連 ※全国のJA組織を通じて出荷されたものだけが使える名称 |
| 佐賀果試35号 | にじゅうまる | 佐賀果試35号 → にじゅうまる | 佐賀県 ※県認定の選果場・基準クリア |
| 温州みかん(ハウス栽培) | 夏織(なつおり) | 温州みかん(ハウス栽培) → 夏織(なつおり) | 大場農園 ※自ら育てた品質保証のハウスみかん |
「ハウスみかん」は別名「温室みかん」とも呼ばれます。それは「ハウスで作ったから」、温室みかんは「ハウスを温めて温室にするから」という理由。
初めてハウスみかんを食べた時、その濃い甘さにびっくりした私(CHISA)は、名前から味が連想できないことをもったいなく感じました。食べた時の感動や、生命力あふれる濃い甘さを、名前に込めたかった。
そういうわけで、大場農園では自ら手がけ、品質を保証するハウスみかんを「夏織」と呼ぶことにしました。
夏織(なつおり)とは
ハウスみかんは、人の手で作り出された「冬の夏」(12月〜2月頃)に、温度をいっぱい吸収しながら果実を育てます。そして、やがてくる本物の夏に収穫を迎える。一年のうちに二度、夏を越す果実。ふたつの夏のエネルギーをいっぱいに織り込んでパワフルな味のみかんです。
夏のみかんを、産地から

大場農園では、九州の最北端、佐賀県唐津市浜玉町でハウスみかんを大切に育てています。
スーパーではなかなか出会えない、農家直送、畑の味のハウスみかん。頑張る自分へのご褒美に、大切な方への贈り物に、ぜひお試しください♪
▶ もっとマニアックに知りたい方へ
このブログは、大場農園の代表・HIROがnoteに書いた記事をベースに書きました。品種の話をさらに深く知りたい方は、ぜひ元記事もどうぞ。
「ハウスみかん」はみかん全体のたった2.5%の、流通量の少ない、希少な柑橘です。
みかんの旬の情報をチェックいただくと、いちばん美味しい瞬間を逃さずにお求めいただけます。

